柳 真佐域ブログ

好きなものを好きなだけ語るのだ

皇国の守護者3

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出だしから面白い。

新城直衛という人間をどう描くかで、 この物語が面白いものなのか、 なろう小説のように酷く陳腐になってしまうのかの分かれ目だと思 う。

新城を滑稽に、ひ弱に描くことには、 細心の注意を払わなければならない。

強さを描く時もまた同じだ。狡猾であり皮肉屋で上司に、 頭を下げつつも内心覆してしまう策を練っているふてぶてしさを、 どこまで読者に悟らせないか。

或いはどこまで読者に悟らせておくべきか。

絶妙な匙加減を期待してページを捲る。

容易く殺せるように思っていた相手に、 渾身のジョルトカウンターを決めて見せる新城はやっぱりカッコい い。

震えるほどにカッコいい。 両性具有者とのやり取りは良いなぁと思う。

新城の性格を思い出させてくれる行為だ。執念深き小心者。

これに立場と力を与えたら、末恐ろしく感じる。

願わくばこのまま読者を失望させない、 有能な上司であって貰いたい。

脅しがマジで格好いい。半分脅すつもりでじゃなく、 本気で暴力に酔っぱらっているところが、ゾクリとさせる。

猟奇的異常者が戦争中だから、 立場があるからと許されてはいるが、平静の世だったら、 間違いなく殺人犯となって獄中にいるだろう。

そんなヘマはしないかも知れないが、 現代の警察はそこまで甘くない気がする。( 時代に許されている感がある)

立場に応じたキャラクターが良い。

有能無能を見極めるこれは、 サラリーマンが読むのにぴったりの本だ。

軍人の拠り所の桜契社が良い。

他人の目を通して新城を評するやり方も細心の注意を持って指して もらいたい。

天龍の坂東も出てきてどんな戦争になっていくか楽しみである。( 不謹慎)

美しき姫将軍ユーリアとの戦いがどんなものになるのか。

憎まれ役を買って出る新城と猪口は、相変わらずだ。

新しい近衛衆兵鉄虎第五〇一大隊は、どんな顔ぶれになるのか。

野卑の対極にある表情とは一体。

「君は魅力的すぎて気が散る。しばらく僕の視界から外れてくれ」 くぅぅぅぅぅぅ格好いい!!

ヘルマン大佐はどの程度の器量を持ち合わせるのか。

藤森も癖がある人物であってほしい。

迷彩服を考案したところがまた強か。

バルクホルンは傑物だろうが、 新城と比べると一枚も二枚も落ちる。

この再戦もどういったものになるのか。


冴香との関係性も見所。

新城が心情としている犬死はしたくないという思いが、 どんどんと核心へと深みへと嵌まっていくようで長く楽しめる。

遂に戦が開戦する。

皇国VS帝国。武器は剣と銃。馬と剣虎。導く術、そして龍。

ファンタジーが混ざっていることで、戦術は未知だ。

キャラクターが活きている。これが才能の差か。

やっぱり面白い文は分かり易くてしっかり重い。

無能な上司を使ってこその管理職だ。

そういう背中を見て部下はついてくる。

そういうものに絡めとられていく新城の姿に、 思わずニヤけてしまう。

しかし、有能なものが先に死んでいくのも戦場の常。

願わくば、少しでも長く新城を支えて欲しい。

これなんだよなぁ、こういう戦争を見たかったんだよ。

戦闘も問題解決も迅速速断でなければ。

それでいてヒリヒリした緊張感を常に付きまとわせておく。

一寸先、一瞬先が死であり、 指揮官は常に喉元に剣を突き立てながら、敵も味方も奮わせる。

無能な上司は御機嫌をにさせて、 敵陣に突っ込ませて自滅させるに限るが…。

無能な上司というものは、自分の無能さに自覚が無いから、 どういう者が有能と言えるのかが分からない。

それでいて立場があり、命令する側だから、 事前と虚勢を張ることになり、そうなれば無能有能に関わらず、 自分にとって味方か敵かどうかで判断することになる。

一度的と認識してしまえば、その者からの言葉には常に、 神経を逆立てて、 揚げ足を取られないようにピリピリと緊張している。

自分のキャパシティーを越えてしまっているので、 愚かにも攻撃するしか反応が出来ない。

あんたのそれは信頼とは言わない。「丸投げ」って言うんですよ


こんなもの只の馬鹿と言わざるを得ない。

馬鹿で冷静でもないから、 問題が起きれば目の前のことで手一杯になり、 先にある利も見出せない。

は~、クソ。(クソデカ溜息)

こんなこと思っているから嫌われるんだろうけど( そういうところで僕もまだまだ未熟だ)。

立ち返って僕の場合はどうだっただろう。

部下を持ったことはないが、自分より能力のある後輩がいた時は、 卑屈になったものだ。

やっぱり隙を探して潰してしまうかもしれない。 でも人によるなぁ。

真面目で礼儀を知っていれば、足りないとこを補ったり、 個性意を活かしたりしたいし。人間性。これに尽きる。

だいぶ話が逸れたな。

美倉准将も良い。

飛竜兵の威力はすさまじいが、驚くほどではなかった。

火でも吐いてくれたら面白かったんだが。

剣虎の生き物だからこその弱点が、戦闘を無機質にさせない。

他人を信じず自分を信じず、決してあきらめない。

「機械を待ち望んでいる?」「待ち望みなどしない」「 作り出そうとしているのだ」クゥーーーーーーーカッコいい!!

しかし、信じることが出来た時、男は猛るというものだ。

甘えに繋がると言っても、その蜜には抗えない。

帝刻が何故導術を使わないかは開示されたが、 皇室魔導院と大協定と新たなる両性具有者に関しては、 少しずつではあるが、まだ完全には明かされない。

佐脇の扱いを、どうするつもりかと思っていたが、そうするか。

戦いの終わりを見た時の新城の葛藤と消化が良い。 まだまだ見ていたい。

ユーリアの全て見透かしていたような口振り( 声に出してはいない)はクソ生意気でキィーーとなる。

無言は雄弁だと?面白い。

そして戦の人幕が下りる。

だが自軍の陣地に帰るまでが戦。

損を被り、尻拭いをするものが必要だ。

そして、ただでは終わらないのが、新城の作った五〇一大隊だ。

甲石。こんな隠し玉の兵がいたのか。ちょっとまで。 ここへきてこんな掘り下げるキャラクターがいるのか。

……作者、相当なガンマニアだな?恐ろしいまでの狙撃の詳細。

え?こいつヤバいな。

甲石、ヒクくらいのキャラクターだ。

作者がノリノリで描いているんだが、それが寒気がするほど怖い。

新城を書いている時より、よっぽど以上に書けている(文章が)。

銃の知識も相まって、とんでもないことになっている。

最後の最後で爆笑した。

新城の信じるもの。それは”腕の良い職人(プロ)”だった。

兄も、漫画版が好きで、続きが読みたいとやきもきしていたが、 原作者と漫画を描いた伊藤悠がモメにモメて、 続きが描けなくなってしまったというエピソードを知って、 原作者最悪と嫌悪している。

作者の人格がどうであれ、作られた物語に罪はないので、 本の読める僕は存分に楽しんでいる。

作者の佐藤大輔さんは、少し前に亡くなってしまったので、 漫画同様、小説が絶版になる前に読み終えたい。

でも、皇国の守護者を読み終えると、 麻雀放浪記が読みたくなるんだよなぁ。なんでだろ?

予想(予言)だが、多分アニメ化する。

日本のCG技術が上がったなら、 大河ファンタジーとしてドラマ化しても良い。

大満足の3巻。

これはすぐに続きを読む奴だな。