はてしない物語(下)
ん~なんてメタ的な物語。
メタメタしいと言って差し支えない。
上巻のアトレーユの物理的な試練から一転、下巻はバスチアンの精神の奥深くの空になった奥底に行き着く試練だったな。
自分の想像力の限界を試される物語に、終始圧倒された。
バスチアンはファンタジーエンの中で、神にも等しい力を授かったが、
それは幼い彼の手には余るもので、結果その点が彼を現世に戻すことが出来たのだろう。
大ハッピーエンドに、思わずニッコリしてしまうし、
最初おどろおどろしいと思っていたファンタジーエンの世界が、今は懐かしく頭をよぎっていく。
逞しいアトレーユに対して、姿を偽った時点で、曇るなと思っていたが、見事大団円に終わらせるのが児童文学の良いところ。
ハッピーエンドが嫌いな人がいるが、ハッピーエンドに対してどうドラマを持っていったらいいか考えられた作品なら良作と言えるだろう。
ヒンレックの伏線は回収されないままだったな。
下巻の途中から一日一話読むのがちょうどいいのが分かって、良いペース配分で、読む→楽しむ→理解する→空想する→感想を考える、が出来て良かった。
アトレーユの物語では、所詮ファンタジーエンの中の話だし、というデバフがかかってしまっていたし、
バスチアンの物語になってからはどうせバスチアンが神様みたいなもんなんだし、と思ってしまって、没入出来ない部分もあったが、
どちらも最初、人物が身近に感じれずにいたところを、物語が進むにつれ、どんどん感情移入していく(させていく)手法が自然であり、上手だった。
きちんと辛いことがあって薄っぺらい旅じゃなかったのが良かった。
ただやはり子供向けの本ということもあって、子供読ませるには軽く合格点を越えている作品だったが、大人が読む、ずっと大事にしていく本としては、少し弱い気がする。
そういう意味も込めて、『モモ』の方が点数が高い。
ただ翻訳が非常に優秀で、一切海外作家の翻訳の違和感を感じなかったし、ですます口調じゃなく、断定的な言い回しがミヒャエル・エンデの新しい側面を見れた気がして良かった。
宮部みゆきも絶対に読んでる気がするんだよなぁ。
物語の世界の捉え方もそうだし、内容もそう。
ファンタジーの世界を旅した少年がどう成長したのかを現代風に書いたらブレイブストーリーや英雄の書になった気がしてならない。
姉氏。読み終わったで。尻尾は掴んだ。
映画版も気になるけど、絵を新しくして見れるものにして欲しい。
思い返してみると、上手い箇所が幾つもあって勉強になった。
役割をちゃんとこなしているストーリーというのは読みやすい。
だれるところも一ヶ所もなかったし、子供が出来たら是非読んで欲しい作品だ。
中学生の頃に読んだらもっとハマったかもしれないが、その頃じゃ鼻にもかけなかっただろうし、
一周回った今だからこそ読み込めて楽しかった。
その発想どこからくるの?ってくらいの空想の部分がまだまだ自分には想像力が足りないなと思った。思い知った。
空想力が大事だし、それはバスチアンが一番持ってたものだ。
エンディングもすべてが丸く収まって、かつ少し名残惜しさと、期待がこもっていて光があった。
こういう経験した人たちが、宮部みゆきでいう『狼』なるのかな。
でももう二度と必要を迫られない限り読まない気もする。
読んで損はない。楽しい読書が出来たことには感謝しかない。