風の又三郎
愛らしいのに恐ろしい。
ほっこり和むところに冷や水を背中にそろそろとかけられたようなゾゾゾっと来るものがある。
動物の視点で絵かかれる物語は、多分しっかりと観察から裏打ちされているんだろう。
ひょっとしたらこんな話があるんじゃないか、という想像の膨らみと、
そこだけ見たらゾッとするようなオチと、温かくも冷たい弱肉強食の世界が身に染み込んでくる。
悪さをしたら必ず天罰が当たる、というのは子供に読み聞かせるにはもってこいかも知れないが、
ともすればトラウマになってしまうほど恐ろしさを孕んでいる。
暗さが森の中のような怖さがある。
昼間はスズメが鳴くくらい暖かいんだけど。でも暖かさが切ない。
人の優しさは儚いものだよと言われている気がして、寂しくなる、悲しくなる。
心を鏡で映されてる感じだな。ホントに凄い。
多分、純粋なことは良いことと思っているんだけど、
純粋であることは汚されやすいと危うさも書いている気がする。
強い登場人物が出てきていないのも見所だな。
佇まい、言葉遣いだけでその人物がどんな顛末になっていくのか分かる。
全体を通して教訓とか道徳を教えている感じがするな。
あっけない最後をあっけらかぁんと書くのが非常に怖い。
すいすい読んじゃいそうになるけど、どれもオチがゾッとする。
あっけらかぁんとしている分、そこらのホラーよりよっぽど怖い。
優しいんだけど残酷。厳しいんだけど温かい。
言葉がなぁ、なんでこんなに単純なのに純粋に感じるんだろう。
味付けとか脚色も一切なくて、そうだったんだよ、と言わせんばかりに、話がそうなっている。
これは異常なことだ。人によく思われたいとはおもっているだろうが、
どう見せれば本当に善いのかこの人は分かってしまっているんだ。
その凄さが何故。さよならね、って可愛いなぁ。萌やわぁ。
この本は、徹底して生と死しを描くことを信念に思っているな。
読むのが止められないのに(短編だから)早く終わってほしいと思ってしまう。
このままで終わってほしいと思ってしまう。あぁ~いいわぁ。
どんどん栄養が入っていく。それも質の高い栄養が。
心が洗われる。山のしみ出た冷たい清らかな湧き水(清水)で洗い流されているようだ。
宮沢賢治の家の龜の水もこんな水なんだろうなぁ。
動物の対するリスペクトが凄いな。表現が光っているな。
人間と動物を同じ目線で書いてるな。
宮沢賢治の死生感に尊敬する。
宮沢賢治が実際に農業をやってて、そのときに見たつぶさな世界の変化がこの世界を作ってるんだろう。
やまなしは小さい沢蟹のちょっとした冒険や自然の情景が見れて健やかになる。
貝の火は教訓を教えられている感じがして反省する。
蜘蛛となめくじと狸は悪いことをすると必ずバチが当たるというにはあまりに残酷な書き方をしている。
ツェねずみで泣きそうになった。
卑しければ罰があるのはわかるが、恐ろしや。ねずみとりのちょっとした変化が見物だった。
クンねずみは気難しい頑固爺なのか。う~怖い~ゾッとするよ~。
カン蛙は、相手の怒った態度からそこまで想像しちゃうのねん。
想像通りなら野鼠たちも健気だな。メタ的に優しい。
シリアスなシーンでも和むこというから殺伐としないけどこれは酷い。あんまりだ。
書くのも大変ですっておい(笑)辛い~。死を乗り越えないと平和はやってこないのか。
二十六夜、凄ぇんだけどわかんないな。日本語が美しすぎる。原石の輝きだ。
老人、まさか貴方は……。雁の童子、純粋で優しくて聡いなぁ。
なんか凄い壮大だったな。私は何者だったんだろう?
澄んでるなぁ。方言が凄すぎてわかんなかったな。
農学校の豚、泣けてくる。可哀想過ぎるだろ。
酷すぎるけどそれを黙認している人間の一人なんだよなぁ。
可哀想だなぁって思うけど、何にもできないんだよなぁ。
苦労が伝わる。自分の想像力が貧困なのがわかる。
報われたのかな、虔十。それにしても綺麗だ。
もっとゆっくり読みたい。表現が愛らしいんだよな。ホント地学も好きね。
ものを知らないと十割で楽しめないな。
ガス灯って見てみたかったな。グスコープドリの伝記になってやっと本意気になった感あるな。
過酷さが辛い。容易にハッピーエンドでないのも考えちゃうとこだ。
昔の子供は親がいないと死んでしまう。晴耕雨読やなぁ。
この言葉が一番宮沢賢治にしっくりくる。勉学は望んでするものだ。
そこに居られなくなって旅は続く。本の少しだけ生き方を学んで旅は続く。
あれもこれも農業を助けたいから学ぶのか。
自分の暮らしてる土地をしっかりと理解して書いているな。
さらにそれを幻想世界に昇華して描いている。
銀河鉄道の夜もそうだけど、映像化してるから観てみたいな。
学があるということは健やかに生きられるということだ。
馬鹿には世は渡航できない。農業を進めていくことで人々を健やかに暮らせるようにしたかったのかな。
自己犠牲だなぁ。でもあんまりあっさりと書いてあるから最初わからなかった。
みんなのために死ねたブドリは幸せだったのだろうか。
宮崎駿の死生感で死ぬことが何よりも美しいなら、
誰かために犠牲になることは美しい死という何よりもの贈り物を貰える気がする。
でもみっともなく生きてこそだとも思う。
美しい死は美談だけど、その先に続いている人生を抗って、
もみくちゃになって、呪ったり絶望したりが人生の本質だと思う。
死は逃げ道だ。
誰もが最期には死んでしまうという絶対に避けられない摂理のなかで、
自分の命を差し出すことはズルいと言ってしまう自分がいる。
僕は自分のために自分の命を投げ捨ててしまったが、こうやってみっともなく生き永らえている。
この生き方を否定しないように僕は僕の物語を書かねばならない。
死ぬより辛いことの先に今の人生があったのだから、
そこで得たもの、そこで見たものを記していきたい。
風の又三郎に入ってまた雰囲気違うな。
お日さまの位置まで詳細に書くか。勉強になる。
くつくつ笑いながら。又三郎は悪い奴なのか純心なのか。
擬音が素晴らしく楽しい。読み終わった。風の又三郎は風のようにやって来た風のようなヤツだったというところか。
やっぱり銀河鉄道夜に比べると一枚落ちる感じだけど、読み返したらまた印象が変わりそうだな。
宮沢賢治もあと一冊で読み終わってしまう。
でも何度噛み締めても面白さが滲み出てくる賢治の文はこれからもずっと僕の隣にあり続けるだろう。
彼のような名文が書けるように精進して、勉学に努めようと思う夏の始まりだった。