柳 真佐域ブログ

好きなものを好きなだけ語るのだ

カエアンの聖衣 バリントン・J・ベイリー

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聖衣がスーツだという意外性、(表紙には描いてあるんだが)スーツに魅せられた男の話だし、全宇宙の知的生命体に影響を及ぼすこの服は人間の上位の存在として君臨するっていう設定がツボだな。

 

あんまりキルラキル感は感じなかったけど、鮮血とか生命線繊維ってそういう設定なんだっけか?

 

やっぱりSFだからスカッとする勧善懲悪とか爽快なアクションシーンとかはあんまないんだな。

 

もっとドッカンバトルするものかと期待してしまったが、それは的外れなんだろう。

 

服好きとしては惹かれてしまう内容だったな。

 

主人公のペデルも魅力のないキャラクターだったし、冷血女のアマラが最後まで懲らしめられることもなく物語が終わってしまったが、最後の一文を読む限り、そこからが一番面白くなってくるんじゃないかという仕上がりだった。

 

もっと言いたいことを煮詰めてくれれば、半分の量で表現できた気もするし、ドラマもそんなになく、大衆小説と比べてドキドキハラハラが少ないのはSF小説全般に言えることなんだろうか。

 

SFはネタバレしても本質は伝えきれないからストーリーを書くが、服飾家の主人公ペデル・フォーバースを乗せた宇宙船が、インバウンドという衝撃音波を放つ恐竜のいる星に、

 

墜落したカエアン星の衣服をしこたま乗せた宇宙船が難破していて、ペデルは特注のモビルスーツを着て回収に向かい、そこで一着のスーツと出会う。

 

それはカエアンの上流階級だけが着ることが許されたフラショナール・スーツだった。ペデルはフラショナール・スーツと何着かのカエアン製の衣装を手に命からがら船に戻ると、仲間たちはペデルをぞんざいに扱った。

 

ペデルはフラショナール・スーツを隠し持ち、自分の自宅で試着してみると、スーツは吸い付くような着心地で、自信のない自分とは打って変わった見た目に、急に自分が魅力的な男性であるような錯覚を覚えた。

 

ところ変わって調査船カラン号の社会学士のアマラと助手のエスルーは宇宙に漂う宇宙服と一体化した生物を見つける。

 

その生物を回収すると、もう一つ別の宇宙空間でも生存できるように体をサイボーグ化させた生物の群れを見つけてその中の一匹を捕まえて、宇宙服の生き物の前に連れ出した。

 

宇宙服の生物は瞬く間にサイボーグを殺してしまい、両者が敵同士だったことがわかった。

 

アマラは宇宙服の生物の服を剥ぎ取ると、宇宙服の生物アレクセイは服を剥がされたショックで気絶してしまった。

 

その頃、ペデルはフラショナール・スーツのお陰で、男としての自信が漲り、故郷ザイオード星で上流階級の仲間入りをしていた。

 

しかし、ザイオードの上流階級はペデルの服の正体に気づきペデルを貶めた。ペデルはスーツの超人的な力を借りて、なんとか家に戻ると、宇宙船の仲間の一人がペデルをはめてスーツを盗んでいった。

 

ペデルと同じくはめられた宇宙船の船長のマストは、カエアン製の衣装を盗んだ容疑で刑務所に放り込まれた。

 

その頃、スーツは人や虫を着渡してカエアンに向かいながらも持ち主のペデルの元へ向かった。

 

ペデルはスーツの導きで刑務所をマストと脱獄するとカエアンに向かった。

 

カエアンには調査船の面々が既にカエアン人に迎えられていた。

 

カエアン人の絢爛豪華な生活ぶりを見つつもアマラは冷ややかな目線で打ち解けようとはしなかった。

 

そこへ同じザイオード人のペデルとマストが加わり、カエアンの衣装が人間や知的生命体を操るという真相を突き止めた

 

その中でももっとも催眠効果のあるフラショナールの木を燃やし尽くさなければザイオードはカエアンとの戦争で不利になると判断が下され、その任をアレクセイが担い、ペデルのフラショナール・スーツと共に焼き払った。

 

ペデルは辛うじてフラショナールで出来たネクタイだけを隠し持ち、自分の家で栽培して自分だけのフラショナール・スーツを作ることを心に秘めているところで物語は終わる。

 

聖衣というくらいだからなにか聖遺物のようなものを想像していたが、象徴となる存在は出てこなかった。

 

アクションがみたいならアクションSFと銘打つものじゃないとダメなんだろうな。

 

基本的に頭のいいSF作家達に血沸き肉踊る大エンターテイメントを求めちゃいけない。

 

あくまで勉強のつもりで読まないと。でもそうなってくるとあんまり楽しめないからなぁ。

 

墜落したカエアン船とかサイボーグとか掘り下げた方が面白くなると思ったところが悉くスルーされてしまった。

 

もう一回読み直すのは辛いなぁ。