柳 真佐域ブログ

好きなものを好きなだけ語るのだ

調律師 熊谷達也


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読み終えた~。意外に速く読むことが出来たな。

 

ピアノ調律の資料のために買った本だが、最初読んだときは、ピアノが生臭く感じる、

 

なんてことが書いてあって予備知識もなしに読んだものだから、ミステリーの類いのものかと思って、

 

顔をしかめて本を閉じてしまったが、改めて読んでみて、その主人公が感じるピアノの匂いが「共感覚」として書いてあることがわかり、

 

それがキーワードになって物語が進んでいくのがわかった。小説の評価としてはあまりよくない。

 

良くない点は主人公を取り巻く人間関係があまりにもベタなこと。

 

それでもストレスなくスラスラと読める文章には交換が持てたし、今まで読んできた蔵書の数々に比べてしまったら明らかに見劣りはするものの、

 

小説の体は成していて、及第点があげられるくらいには面白かった。

 

ただ亡き妻との繋がりである共感覚だとか主人公周辺の人物たちに魅力を一切感じず、

 

ならば主人公はと聞かれれば、自分本意の嫌なやつという印象を受けてしまった。

 

出来るなら共感覚みたいな味つけをしないで、調律師一本の矜持を見たかった。

 

ピアノの調律に関しては専門知識がふんだんに出てくるので知りたいことは知れたが、

 

後半にかけてのまさかの震災小説になって、色々と本書の持っていたテーマが移ろってしまった。

 

読ませる文なので震災のシーンになっても細かい描写と説明力、あと主人公自身の頭のよさもあって、

 

遜色なく読めてしまうのだが、調律師という銘を打っているのに、いくら書きたい、書かなければいけないとしても、必然性は見当たらない。

 

たぶんこの人は別の作品を書いていたとしても、同じことを書かずにはいられなかっただろう。

 

悔しいのが、自分と作風が似ていることだ。

 

さらに、小説家としてしっかりとした下調べが出来ている点も敵わない。

 

無名の僕が取材なんて出来るのだろうかという悩みがあるが、小説家として作品を一作でも出した人ならば、容易に取材はできるだろう。

 

今ある差はそのくらいで文章力においてや、キャラクターの魅力の出し方、キャッチーな内容に関しては僕の方が良く書けていると自負がある。

 

出来の良い2時間ドラマをみたような読了感なので、この先この人の作品を追ったりすることはないだろう。

 

教師と小説家の二足のわらじで活動しているみたいだし、

 

これから先小説家一本でやっていくには余程のマーケットを確保でき、執筆速度が極端に速く新作を何本も出し続けられる人だろう。

 

そうなれないなら趣味で出来る時間に書いて、好きなときにネットにアップしていくスタイルが主流になるだろう。

 

これからはちょっとでも絵が描けたり文章が書けたりする人が暇潰しもかねて創作していく割合がもっと増えると思う。

 

絵や文の世界にリア充が押し寄せてくるのだ。

 

出来るんならやった方が良くな~い?というノリで聖域を荒し始めるに違いない。

 

その方が僕は本望だが、そうなってくるとますます売れるというのが難しくなってくる。

 

自分の好きなことをやっている時点で売れなくても構わないではあるけど、この世に生を受けたのなら一度はプロの世界も見てみたい。

 

読んだら自信も湧いてきたし、執筆再開近いかもしれない。取りあえず今は読んで読んで読みまくるぞぉ~!