リーンの翼
濃い!濃いわ~!色んな貝を煮詰めて煮詰めまくった凝縮エキス全開の、農耕強烈さ加減がヤバイ!
今まで読んできた本の中で、一番内容の詰まった味がする。
富野さん凄いなぁ~、こんな文を書く人だったんだ!
閃光のハサウェイを読んだ時には、あまりの難解さに本を閉じてしまったけど、(リーンの翼は)2度目のチャレンジでやっと読めるようになって、この研ぎ澄ました日本刀のようにリアルな文章に、圧倒されっぱなし。
濃いし、強いし、堅いし、重い。
それでいて命の重さは軽いから、切実さが伝わってくるし、今まで読んできた異世界ファンタジーが生ぬるいこと生ぬるいこと。
こうだよ。これが読みたかった。最早こうでなければ読めない。
富野さん、普通に小説家として食って行って欲しかったとさえ思う。
てっきり絵で語る人かと思ったら、マジもんに文章が秀逸。
描写っていうか、芝居が凄い。
全カット一筋縄ではいかない奥行きと緊張感。
離されないようにするので精一杯で、一瞬も気が抜けない。
節が終わる時のこの疲労感たるや。
この歳になってやっと読めるようになったけど、僕が本当に読みたかったのは、これなんだよなぁ。
この厚さ、重厚感。
富野作品独特の言い回しもまだ薄く、多少あってもそれをきちんと説明してくれるから読める、読み込めるぞぉ!
しかも知ってなきゃ書けない描写が、小手先にでは書けない作者の腕に厚みと癖を感じる。
感嘆には落とされない遥か高みにいる感じがくぅぅぅぅぅと唸ってしまう。
また男女の書き方が艶めかしくていい。高尚なエロ本だ。
粗野で乱暴で力強くて切迫している。生きている。
宮崎駿のような憧れや理想、生易しさはなく、ただ一直線にリアル(生)を書いている。
えぐみ、苦味、刺激。
勢いに任させて読もうと逸る気持ちの手綱を引く。
なろう作者はこれを必修科目にして欲しい。面白いとはこういうことだ。
俺Thueeeeeだってこうやって書くなら、リアルになるし、でもなぁ今はリアル志向は古いんだろうなぁ。
「リーンの翼」の設定が良いなぁ。
光の翼のイメージはこの時点でもうあったのか。
しかし、オーラバトラーが出てこない。
足にだけ顕現するリーンの翼って、そういう物だったのかと驚くし、段階的で納得がいく。
迫水の主人公像もいいなぁ。
決して怖気づかず、真剣勝負に潰されない意志の強さと、法定により肉体と精神を研ぎ澄まして、まさに日本男児のあるべき姿。
それでもってきちんと心の中で葛藤し、臆するギリギリのところで立ち向かう。
異世界に独りという心細さを常に胸に残し、エ・フェラリオのハロウとの情事も絡んだ関係に、それでもそれが容易く奪われた時、ゲリィもそうだが、しっかりと大事に(というか心を縛っていた)思っていたことが分かる。
この過酷さこそが、富野作品。
ガンダムよりずっと良いし、イメージが古びない。
ハロウ、ゲリィと来たら、リンレイでまた一つ覚醒イベントがあるのかな。
活劇なんだけど、爽快感がない。
いつまでも肉弾って感じで、胃にずんとくる。
女を描くのも上手いなぁ。生々しい心情に性を感じる。
愛だとか恋だとかで恋情を書かないこの手腕。唸る。
ホント読むたびに思うけど、読む前に深く潜る覚悟が必要だな。
しかも、宮沢賢治のような冷たく澄んだ暗い海じゃなくて、肉壁を掻き分けてその奥にある核に近づいていくような、息苦しさがある。
雄と雌と強く感じる。
日本の敗戦とバイストンウェルの関係が、迫水を良い意味でも悪い意味でも奮起させる。
意味のある台詞しかない。その意味も分かりにくくする工夫が全編通してあって、最早これはそうしなきゃ書けない呪いにかかっているよう。
問答もこれはAですか?はい、それはAです、なんて知能指数が低いことはしない。
戦いの最中でも、狡さや強かさ、弱さ、歯痒さ、恋人への愛情、性欲、自己嫌悪に悩む姿が、大人の読み物だと言っている。
ぶっちゃけ読みにくい。でもこの読みにくさ、この容易に分からせてたまるかという富野さんの姿勢が、常に感じられて良い。
骨肉の争いというのがピッタリな表現。面白みが深い。
英雄的主人公なのに、ちゃんと下げる辺り、リアルだ。
かぁーーー!読み終わったぁ!
骨太の書き方(太刀筋)に感服です!こっちゃんです!
時間かかったなぁ。こんなに読みづらい物語読んだことがない!
SF感はない。
やったことというと、召喚され、アマルガンと共に戦い、ハロウとヤり、ハロウが死に、アマルガンと共に海賊になり、リンレイを助け、ゲリィが死に、リーンの翼が顕現し、リンレイと共に財宝を探し、リンレイとヤり、ミン・シャオの化生を倒し、国盗りが始まるって感じか。
やってることはそれだけだけど、胃もたれがするほど重かった。
全4巻あるけど、2巻はしばらく後でいいかなぁ。
歯応えが欲しくなったら読むことにしよう。
干し肉のような小説だった。