文鳥・夢十夜 夏目漱石
文鳥、なんか浮世離れした主人公だな(笑)奇人変人を素朴にした感じだな。こんな人いないよ。
いるとしたら随分暢気な人だな。面白いなぁ、なんで金を猫ばばしようとしてるのを目撃しても止めないんだ?
紳士の余裕というやつなのか?いや、騙されてる騙されてる(笑)危機感無いなぁ。喋り口調が面白い。
ちゃんとキャラクター化している。書く必要のない描写を書くことで主人公がどれほど悩みがなく恵まれた生き方をしているのかがわかる。
騙されてる~、集団で騙されてるよぉ(笑)判断がつかないのに安いなぁって言っちゃダメでしょ(笑)
ホントこのボンクラ可愛いなぁ。なんか落語のように思えてきたぞ。8時過ぎに起きるのでもう遅かったんだから、昔の人は早起きだよな。優しいな。
好感が持てる。確かに夏目漱石はあの時代の坊っちゃんって感じだな。
文鳥を昔の女のように思うようになったのに、世話するのも忘れてしまったのにも関わらず、
死んでしまった理由を下女に負わせるのは、愚かさとか薄情さより至らなさと未熟さだと思う。
文鳥を確かに飼って、死なせるまでいかないと書けない経験から来る創作意欲は素晴らしいことだと思う。
何となく傍らにいた文鳥に心を寄せているんだけど、愛着とか執着を持つ前に死んでしまい、文鳥が家族になることはなかった。
切ないと言えば切ないがあってもなくてもいい話でもある。それでもあった方が、人生を少しばかり豊かに、切ないものにしてくれる。
鳥を飼うということはその程度にしか味つけ、色づけするだけである。
特別なようであり、普通のようでもあるが、確かに世話をしてその分、鳥を生かしていたのは自分だったのだとわかると感慨深いものがある。
二夜、物騒な話だな。座布団の下になにがあったんだ?和尚と侍の話か。
なんだろう、無我の境地になれない侍が僧侶に嫉妬している話だったのか?
ものすごい短いからよくわからないうちに終わってしまった。なんとも言えない殺伐とした感じだな。
何を伝えたいのかさっぱりわからんが、想像力豊かな漱石が見た夢だってんなら、時代も場所も飛び越えて侍の気持ちになったりするもんなのだろうか。
まぁ、所詮は夢の話。深く考えさせる幻を見ただけだ。こういう時空を超えるような夢は見たことないな。
夢は自分の見たもので構成されている。漱石も武士のことや六夜の運慶のこととかを強く調べていたのだろうか。
三夜、不気味な子供だな。気持ち悪い、不気味な感じが漱石っぽいのかな。怖いなぁこの子供。
ホラーよりも不気味だ。聡さが怖い。うわぁ気持ち悪い。こんな短い短編でここまで気味の悪さを書けるのは凄いなぁ。
しかもこれが夢っていう設定で行われる凄さよ。結末は分かりそうなものだけど、そこをギリギリ引っ張るのはホラーの手法だ。確かに面白い。
でも本棚に置いておきたいとはちょっと思えないかなぁ。夢十夜が全部夢だってのがマイナスポイントになってる。
夢だからこそ面白いともいえるんだけど、夢だったら何でもありで、何でもありな割りには物語になっている辺り、気持ち悪さに整合性がついてしまっている。
四夜、う~ん、なんなんだろう。こんな夢見たんだけど、にしても出来が悪きやしないか?
この短さでなにか思えっていうのは至難の技だぞ。人の夢にとやかく言う時点で評論は成り立たない。
一歩引いた目で読書しなければならないが、それは研究になってしまうんじゃないか?
捉えようによっては変な解釈が出来るかもしれないが、それは偏見なんじゃないか?エンターテイメントとしては下の中くらいだぞ。
なんか夏目漱石だから出版するのが許された感じあるよな。ちょっと妬みが湧いてきた。
五夜、途中まで良かったけど、意味がわからんな。天探女ってなんの比喩だ?てか誰なんだ?
鳥が鳴くまで待ってやろうという大将に対し、天探女が鳥の真似をして二度鳴いたのに対し、
こいつは俺の敵だ!と名指したところ、愛する恋人も殺したこいつを最後まで憎むんだろうけど、
何となく手塚治虫の火の鳥のようなちょっとした神話感がある。七夜、中々に良い。
漱石が統合失調症だったということからいつも苦悩に苛まれていたのではないかと共感できる。
苛まれるなか、死というのは他人より身近にあって、唆される。
自分が生きている不安が書かれていて、心を許したくなるが、僕の求めている漱石はもっと凄い人のはずで、
弱さを見せるなら太宰がお株をとっているので、それ以上のものがみたい。
太宰が心中なら漱石は他人の目を気にして気にしすぎて心を病んでしまった感じか。
足が甲板から離れてからの描写が長いのは、死の恐怖や不安が徐々に自分の首を絞めていく気持ち悪さからか。
なにをこんなに不安がってるんだろうか。八夜、物腰が丁寧だな。なにも言えない。
日々の生活の一枚をただ馬鹿丁寧に描いた感じだろうか。これも小説の体を成していない。
山もなければオチもない。だからなんの感想も浮かばない、印象にも残らないだろう。
九夜、母親気がふれたのか?夢の中で母から聞いた、でバフをかけてるのか。物寂しい雰囲気と哀れな感じ。
十夜、お伽噺のようでもあり、寓話のようでもある。所詮は夢、不思議なことが起きて、でも支離が滅裂にはなっていない。
漱石へのアプローチはずっと失敗に終わっている。合う作家ではないんだろうな。
辛うじて読み物として成立しているが、読んでいる楽しみが見つけられなくて辛い。
漱石のここがいいんだよなぁ、というのが分かる前に癖の強い部分を先に読んでしまった気がして、出会い方をミスった。漱石は好人物ではないな。
物事を見る目は純粋素朴だが、頭が良い分、口が回る。丁寧に描写も出来るが、光るものはそれほど感じられない。やっぱり第一印象が正しかったか。
好きにはなれないなぁ。小説を書かねば死んでしまうという気迫も情熱も感じられない。
その方が一番暮らしやすいから小説かになったかのような印象を受ける。だからこそ、一生懸命やっている者から嘲笑されたり、
それが言葉上では理解できても感情の面で心に響くことはないのだろう。
読んで良かったとかためになったとか、前向きに何度でも読み返したくなるという類いの文ではないな。
本棚にあったら、いつまでもこれって本当に良い小説なんだろうかと悩んでしまうと思う。
なのでそんな迷いは背負いたくないので、読み終わったら躊躇なく手放してしまおう。
現国の教科書も、100分名著も良い部分を抜き出すことに成功している。その分、他の部分は捨て置いても差し支えないくらい、なにも感想が浮かばない。
自分の感性の栓が詰まっているのか、捉えて共感する体験が足りないのか。
小説家は自分の意見に共感してくれるように書くのが普通だが、漱石自体はそれよりは一歩引いた目線で置きにいっている気がする。
本当に短い3~4Pの短編だが、読み進まないのはつまらないのと、意味がわからないからだと思う。
これを書いて読者に何を思って欲しかったんだろうか。作者の意図やメッセージが伝わらない。
すごく頭が良いのにやっていることが普通のことだから違和感があるのか。
何でこの人はこんなに頭が良いのにつまらない日常のことばかり書くんだろう。日常のことが自分にとって大事件だったのか。ダメだ。
面白さを感じなくなってしまった。何だか小説になりきらないネタ帳を覗いてしまった気分だ。
好きにはなれない。